「別れよう、俺はあの光景を見て付き合っていられるほど寛大では無い。」
マナにとってそれは最も聞きたくない一言だった。
「嫌だよセイ、ごめんなさい。お願いだから。」
マナは泣きながらセイに悲願した。
しかしセイの言葉は非情にも期待通りの言葉ではなかった。
「もう・・・・戻れない。」
セイはマナの方を向かずにそう言い残し去っていった。
「いやああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そしてマナとセイの恋は終わった。
なぜマナがムサシとデートしていたのかというとそれはセイの見間違いでデートしていたわけでは無かった。
ちょうどこの帰り公園で一休みしていた時ムサシが無理やりマナの唇を奪ったのだ。
マナに非は無いがムサシとキスをしてしまったという事には変わらなくそれを見ていたセイは皮肉にも生まれて初めて嫉妬いう感情を心に持った瞬間でもあった。
第二の人生は霊能力者!?
第十五話「二人の行方」
シュウジ
第三使徒が来て既に二週間が過ぎようとしていた。
サードチルドレン、碇シンジという存在が無くなり、シナリオに大きな変更が余儀なくされたゲンドウ。
ゼーレをつかい、ドイツにある弐号機の本部召集要請と、参号機、四号機の導入に成功したが、それにはまだ時間が掛かった。
レイは第三使徒サキエルとの戦闘で重傷を負い、後に死亡。
それにより三人目に移行したレイしか、ネルフ本部にしかいない。
それに参号機、四号機に乗るチルドレンの選抜もまだ決まっていない、まさにネルフは危機的状況に陥っていたのだ。
予定ではシンジが初号機に乗り、第三使徒を倒し、ネルフにも活気が沸いているはずだったのに・・・
もちろん、そろそろネルフに顔を出そうと思っていたシンジだが、セイとマナの関係がますます悪化し、未だに第三東京市に行ってはいない。
そこでセイとマナを除く【ジャッジメント】で、ある作戦を考えた。
その作戦名は『仲直りなんてバッチリ!!ラブラブ大作戦!!!』を決行することになった。
この作戦はその名の通り、マナとセイを仲直りさせよう、というものである。
セイとマナを除く【ジャッジメント】は、作戦会議の最終確認のために集まっていた。
「作戦まで後一日となりました、準備のほうは万全ですか?」
「「「「大丈夫です!!」」」」
シンジの言葉に全員が返事を返す。
セイとマナの関係で悩んでいたのはシンジ、アキだけではなく、この作戦を絶対に成功させようと思っていた。
なぜ、【ジャッジメント】の皆も作戦に参加することになったかというと、マナは明らかに元気がなくなり、セイは感情を出さなくなったのが最大の原因である。
「このままじゃ、どちらかが壊れてしまうから。
僕達が仲直りさせましょう!!」
「「「「おお!!」」」」
マナとセイの二人には知らない所で、着々と準備が行われていた。
そしてついに作戦が始まった。
次の日、いつもと変わらない朝を迎えたセイは、マイと一緒に寝ていた。
マイはセイに懐いているらしく、いつも一緒に行動している。
セイもその事に関しては何も言わずに、ただマイの好きなようにさせている。
「おはよう」
「・・・・ああ」
マイはいつものように朝の挨拶をセイにし、そしてセイも無愛想に言葉を返す。
はたから見ればセイは無口な兄、マイは兄のことが好きな妹に見える。
二人は寝間着から普段着に着替え、リビングにでた。
学校に行っている元少年兵達とは違い、二人は学校に行っていないので、静かに喋ることなく黙々と朝ご飯を食べていた。
すると其処に同じく学校に行っていないシンジとアキが家に入ってきた。
「「おはよう、セイ、マイちゃん」」
「おはよう」
「・・・・ああ」
二人の挨拶に、セイとマイは起きた時と同じに応答する。
8歳とは思えないほど感情が乏しいマイと、同じく感情が乏しいセイはまるで、年のとった老人のような雰囲気を出している。
「今日ね、マナがお弁当忘れちゃったの。
だから届けてくれない?」
「お前らが行けばいいだろ?それを理由にデートでもして来い」
作戦で重要な一つである、お弁当のお届けをあっさりと否定したセイ。
実はマナには毎回作っているシンジお手製のお弁当を持たせていない。
そこでセイに学校に届けてもらおうとしたのだが、見事に失敗した。
シンジとアキは内心焦りながらも、顔には出さずに説得を続けた。
「ほら、マイにも学校ってものを教えてあげなきゃ。
ついでに散歩でも行ってきなよ、毎日毎日部屋にいるんだから」
「・・・・・・・」
アキの説得に少し押されたのか、セイは腕を組み難しい顔をしながら考えている。
セイは用事がない限り、外に出るという習慣がないのだ。
マイもセイにくっついているので同じく家から出ない。
アキはそれを理由に説得を続けた結果、セイはマイを連れて【ジャッジメント】の多くが通う学校へと向かった。
「ふう、何とか行ってくれたね。
これが駄目じゃ作戦は、大きく変更になるとこだった」
「これで少しはセイとマナの関係もいい関係に戻るでしょ♪」
セイとマイが家から出て行った後、二人は作戦の成功を願いながら、自分達も着々と作戦準備を整えていた。
一方何も知らないセイは黙々と、学校に向けて歩いていた。
セイの服は相変わらず黒い服を好み、今日も全身黒である。
セカンドインパクトの影響で、常夏となった日本は、特に真昼にはかなりの温度が上昇する。
よってセイの着ている服など、この日本では自殺行為である。
よって通り過ぎていく人達は、セイの服装を見て、見るからに嫌そうな顔をしている。
他人を見て、暑さが精神的に倍増したのだろう。
それに対し、本人は平然としているので、余計にそれがムカつくのだろう。
そしてマイは白いワンピースを着て、頭には麦藁帽子を被っている。
可愛さがより惹きたてられ、腰まである銀色の髪で神秘的に見えるその姿はまるで妖精の様だ。
凸凹コンビの二人は、人の視線をたくさん浴びながらも、まったく気にせず平然と歩いていた。
その頃、マナは、シンジのお弁当を早く届いて欲しい、と思いながら授業を受けていた。
「(ああ〜〜お弁当〜〜〜)」
いつも早弁するマナは空腹に耐えていた。
授業などまったく聞いていないようで、窓から景色をただボーゼンと見ている。
よく見ると、目には力が無く、景色などまったく入ってないようである。
ふと校門の方を見ると、其処にはセイとマイが学校の門についている鍵を壊してる姿が見えた。
その姿を見たマナは、思わず噴出してしまった。
「(何でセイとマイちゃんが居るのよ〜〜〜!!!!)」
幸いマナが噴出したのは気付かれなかったらしく、周りは授業を受けている者、寝ている者など様々だが、マナに対しての反応は無かった。
もちろん『仲直りなんてバッチリ!!ラブラブ大作戦!!!』を知らないマナは動揺を隠しきれていなかった。
「(どうしよう!どうしよう!!)」
そんな事を考えているうちに、授業は終わってしまっていた。
お昼休みになったので、購買に走る者、机をつけて食べる者など、慌しく動いていた。
すると廊下の方がやけに騒がしく、マナは教室から廊下を覗く。
其処には土足のセイとマイが、他の教室を覗いているのが見えた。
「ほら、弁当」
「あ、ありがとう」
こちらに気付いたセイは、マナに近づき弁当を目の前に出した。
マナはまだ驚いているのか、声が裏返りながらお礼を言った。
お使いが終わったセイは帰ろうとしたが、マイが女子生徒に囲まれていた。
「きゃ〜〜!!可愛い〜〜〜!!!」
「ねえ、名前何て言うの?」
マイはまだ人見知りするので、ただオロオロとしている。
「おい」
その時空気が変わった。
殺気を放つセイによりその場に居る全員が動けなかった。
動いたら殺される、と誰もが思った。
「マイ、行くぞ」
コクッ
セイの言葉にマイは女子生徒から抜け出して、セイを追いかけた。
セイが居なくなり、一斉に動けるようになった生徒は顔を青くしながらも、それぞれ散って行った。
「・・・セイ・・・」
マナは既にいないセイの名前を小さく呟いた。